人気ブログランキング | 話題のタグを見る

2号機 Fail <道> 4

塩見通信 ~道(みち)~ Vol.4: 22.2.2013 from Las Vegas

近況
 日本でやりたいことが明確になるにつれ、早く日本に戻って次の挑戦を始めたいと思うようになった。そこでいつも通りに感じたままに、進路を西から東に変更し、シンガポールから一路真冬のBostonへ。そこからNY, Philadelphia, D.C., Las Vegasと移動を続け、これから最後の目的地San Franciscoへと向かうところである。半年以上も帰国予定を早め、訪問予定であった多くの国々を今回は諦めることになったが、新たな一歩を踏み出したことにとても興奮している。ネオンがきらめく不夜城Las Vegasより、夜遊びの代わりに塩見通信第4号をお送りします。

「なぜ自分が」
 僕はよく「なぜ自分が」と、自分の不運や不幸(と思っていたもの)を憎んでいた。生きてること自体が奇跡、有難い、そんなこと言われてもなんで自分ばっかり、、、自分ほど苦しんでいる奴なんていないと思っていた。周りの誰よりも自分が苦しんでいるとさえ思っていた。馬鹿でした。
 「もう選手としてフィールドに立つことは不可能」と執刀医から言われ、光の見えない中やみくもにトレーニングを続けていた。そんな折コーチから一人の鍼灸師を紹介していただいた。真っ暗闇の中で見えた一筋の光、そんな表現がぴったりだった。
 鍼灸師から言われたことはとても信じ難かった。「怪我してると思うから痛いんだよ。」目からうろことコンタクトレンズがこぼれ落ちた。たとえその箇所になんらかの異常があるとしても、そんなの身体全体の1%にもならない。たかが1%でプレーできないなんてありえない。気にせずプレーしなさい。サポーターなんてしてると、自分の身体が勝手に怪我してるんだと思い込んでしまう。君の身体はそのままで完全だ。このようなことを言われた。それから2年以上僕はプレーを続けることができた。今でもできる。
 僕にとって恩人とも言えるその先生はいつも、「自分に起こることで無意味なものなんて何もない。」とおっしゃる。全てが自分のためだと。誰もが言う言葉だが、僕は先生にそう言われて初めてそれが腑に落ちた。というよりも、そう思えるようになった。時間はかかったが。
 そう思えるようになってから僕は生きることが楽しくなったように思う。受け入れる。赦す。「楽しい」と字を同じくして、生きるのが楽になったも言えるかもしれない。初めてこの世に生を受けたことに感謝できた。
 ここで本題に入りたい。先日、D.C.にある国立ホロコースト記念博物館に行ってきた。ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害に関するものである。それだけでなくルワンダでのフツ族・ツチ族の対立、そして迫害。その他人種、宗教、国籍、民族、などなど世界は差別が溢れ返っている。
 彼らは、彼女達は何を思っただろうか。区別でなく差別を受ける人間達にも、先生は同じ言葉を吐くのだろうか。この場合でも同じなのだろうか。
 実は第二次世界大戦の際、日本人(正しくは日系米人)もアメリカにおいて人種差別を受けている。アメリカで生まれ、アメリカで育ち、アメリカのために戦おうとしていた日系人達が、真珠湾攻撃を機に土地を追われ、財産を奪われ、強制収用された。その数は当時の日系人の約90%に上る。実際に第40代米大統領ロナルド=レーガンもそこに差別があったことを認め、D.C.には”Memorial to Japanese-American Patriotism in World War II”という記念碑が存在する。しかしどこの地図にも日系人の慰霊碑は表示されていない。観光案内用の地図にも、路上の地図にも。同じ規模の朝鮮戦争やベトナム戦争の慰霊碑はどこでも表示を発見できるのに。もちろんそれは米系米人が死んでいるからだろう。そんな差別を受けた日系人達に対しても先生の考えは変わらないのだろうか。
 僕は自分が「塩見家だから」という理由で差別を受けるような状態を想定すると、とても自分にとって無駄なことなんてないと考える自信はない。想定できないから難しいが、受け入れる自信はない。
 しかしネルソン=マンデラは赦した。自分を刑務所にぶち込んだ白人を赦し、一つの統合国家を作った。たぶん先生も同じなんだろうなと思う。意味のないものはないのだろう。彼らに「なぜ自分が」はないのだろう。そこから生まれるものは憎しみや怒りといった負のエネルギーであり、前進はあり得ないことを知っているのだろう。
 と、ふと思いました。もう帰国なので、先生に直接お話伺いに行きたいと思います。

感想、反論、意見、なんでもよろしくお願いします。 塩見典大(しおみのりひろ): shiomi_nori@yahoo.com
 
 

 
名前
URL
削除用パスワード
by six210 | 2013-02-23 12:48 | Comments(0)

我が家のワンコのことなど


by SIX210